豊年エソ

豊年

願う

 

村々に

氏神

祠ありて

 

黄金色の稲

高い空に

秋風が吹けば

 

実りの匂い

一面に広がる

 

豊年

村の隅々に

山の端に

海の底まで

願う

 

たどたどしい

語りと踊り

 

反復だけの音

哀しい笛

 

実りの終わりに

夜は更けて

 

寒さに怖じ気

家へ帰る

 

豊年

願いの声は

 

夜空に飛んで

広がり

溶けて

消える

 

たちまちに

無くなった

 

ただ

声の残照は

 

村々に残り

 

遠い

わたしの脳漿にも

響いた