死別の匂い

何度も

身近な死を

経てきても

 

遭うたび

死の趣は異なる

 

個人の生に

まとわりつく

因縁が

 

死別の様相を

描き出す

 

もうすぐ死ぬ

この人は

 

大事な人であった

 

死を前にすれば

すべての時は

貴重で

 

残り少なくなるほど

手元に残したい

衝動に駆られる

 

今日より明日

また次の日

 

確実に減ってゆく

月日

 

何も出来ないのではなく

何もなく過ぎることが

 

この上なく

有り難かった