誰もいない家

人のいない家は

がらんどうで寂しく

 

死に向かう路を断つべく

病院へ旅立ったはずが

 

いつの間にか

戻る見込みは

なくなっていた

 

淀んだ空気は

家人ありし頃の

匂いを思わせ

 

埃がうっすらと覆うほどに

建物の生気は

失われている

 

ここに居て

生きていた痕跡が

あり余りながら

 

それらは全て

死者の遺産へ

変貌しつつあるのだった

 

家人の名残りは

仏壇に置かれた

一杯の水

燃えさしの蝋燭

 

祖先を弔い

死者を想う行為が

 

そのまま死にゆく者の

生の証となり

 

死を廻りながら

生きている

 

この家の

滅びゆく

やるせなさを示していた