酒の哀しみ

酒は緩慢なる自殺という

若い頃の酒は
友達と飲むもので
アルコールの力を借りて
馬鹿騒ぎするためのものだった

今は酒を一人で飲む
ゆっくりと
麻痺して軽くなった頭で
空想を巡らせるために

酒屋の片隅のカウンターで
うつむいて
酒を飲む
そんな飲み方がうまくなった

ストレスの発散や
仕事帰りの安息に飲む酒は
どこかあかるくて
生きるための酒と思える

今の私は
酒のために
酒を飲んでいる

落ち着いて
停滞した
自壊の甘美による
夢見心地

こうして酩酊すれば
楽しい世界を思いえがく

そんな繰り返しの日常は
やはり哀して
しっくりくる

緩慢なる自殺