お腹の外へ

胎児は息をしない

へその緒から
酸素も
栄養も
もらって
羊水のなかに浮かんでいる

生まれた刹那から
重力を背負い
息を吸い
自分で栄養を摂らねばならない

胎児は楽だ
引きこもりの理想だ

だけど
すべての人は胎児だったけれど
今は胎児じゃない

胎児じゃなくて
死者じゃなくて
その間のどこかでゆっくりと死に向かっている

子宮に引きこもるのは
人生を逆行しようとすることだ

生まれたくても
生まれたくなくても
生まれてしまったのだ

どれだけ悩んでも
それだけは否定できない

死にたい人は死んだら良いと思うが
死ぬのはすぐにできるし
どうせ死ぬのだから
それは最後に取っておいて

子宮の中ではできなかった
やりたいことをする

美味しいご飯と
美味しい空気と
どこまでも続く世界は
自分の手の中にある