呪詛の源流

悪人は罰せよ
悪いことをしたやつが悪い

この二十年

世の中では社会のルールが
揺るぎないものになった

こんな世界だったか

悪いことをすれば
なぜそんなことをしたのか
どうして悪者になったのか
斟酌することを忘れてしまったのか

悪人は最初から悪人だったわけじゃない
最初から犯罪を犯したいと思っていたわけじゃない

どこかで追いやられ
余裕をなくして
世界を恨んで
悪事に走ったのだ

小さなイライラも
日常に起こる差別も
やるせない不満も

人はみな持っていて
それをやり過ごせない者が
呪詛を育ててしまう

思いやりを持てとか
人に優しくあれなんて言わない

人間は誰しも
あるところでは勝者で
別のところでは敗者になる
全面的な勝者も敗者もいない

善人も悪人になるし
悪人を慕う人もいただろう

だから頼むよ
人を攻撃して
人を貶めて
それきりにしてくれるな

自分の鬱屈を
他者にぶつけて
溜飲を下げてくれるな

人を貶すのは
ほどほどにしなければ

誰かを地獄に突き落とす権利など誰にもない

人を地獄に落とすなら
自分も地獄に堕ちる覚悟がなければならない
自分が安全なところにいて
相手に打撃を与えてはいけない