通夜

歳を取れば
人の死に出会うのは必然だけれど
大切な人の死は
片手で数えるほどしかない

結婚式の浮かれ方に比べると
通夜に参列する顔は
どこかしみじみとして
同時に義理堅い

酒が入れば
声も大きくなって
どこにでもある飲み会になるが
ふとトイレに立ち
故人の肖像に目をやると
通夜であることを思い出し
宴席に戻り
死者を心の隅に住まわせて
また酒を飲む

死は絶対的なものだから
どんなに願っても付き合いはお終い
それでも記憶と想像の中に
その人は居て
自分の世界が現実だけにあるのではないと
教えてくれる

歳を取れば取るほど
友達に死者が多くなって
生と死の線引きが混濁してくる
それが死に近づくことなのかもしれない