酔客

大衆酒場では
酒は好きに飲めばいい

マナーだの
エチケットだの

果ては
作法だの
流儀だの

細かいことを
しかつめらしく

粋でいなせな
飲み方は

小料理屋でも
割烹でも

それなりの場所で
格好つければいい

とは言え

ベロベロに酔った隣人は
歓迎というわけではい

どこまでも大きな声
姿勢を保てず
ビールジョッキより
自分の頭が傾いている

無警戒な素直さと
裏腹の
他者を省みない無遠慮

微笑ましさで済ませるか
迷惑にうんざりするか

その日の心で
機嫌は変わり

それでもなお
毅然とした世界より

だらしなくても
寛容であれ

いつか
自分も酔客となって
迷惑をかけたなら

許して欲しいという
酒飲みの自己弁護が

自らの内に秘められていると気づいて
そっと盃を傾ける