傘が開く

ビルの谷間に
一輪
また一輪と
傘開き

曇天から落つ
水粒を受く

一滴
また一滴

粒は流れ
地に落ち
世界を煙らせる

降り注ぐ水
受ける傘

雨にも雪にも
人はひるまず

花模様や
ビニールの天蓋を掲げ
街を歩く

こまごまと動く
命の数

眺めているだけで
圧倒されるエネルギー

それらが一個一個
わたしと同じように

悩みも苦しみも
喜びも悲しみも

抱えて

この雨の中を
歩き回る傘の下に在る

なんとありふれていて
かけがいのないものなんだろう