人と違う

銭湯の口開け
前に並んだ人は
話せなかった

番台の女将は
タオルあるか
石鹸持ってるか
次々に問いかける

ア~ウ~と
困ったような仕草で
何とか返事を試みたが

女将は間をおかず
事務的にタオルと石鹸を手渡して

150円ね
と言った

彼の手提げには
タオルとボディーソープが
上に積まれていた

だが
言い返すことなく
彼は金を払い
脱衣所に向かった

女将は面倒だったのか
小金をせしめたかったのか
それは分からない

いづれにせよ
女将だって悪人ではない

この程度の勘違い
どこにもある

ただ
相手にとってはどうだろう

ハンディキャップのせいで
少しであっても
余計に金を払ったり
不要なサービスをつけられる

こんなことが
繰り返されたら

なぜ自分だけが
いたずらに損をしなければならないのか

なぜ自分だけが
面倒くさがられるのか

なぜ自分だけが
なぜ自分だけが

そんな鬱屈が
積み重なっていったとしたら

外に出るのも
人と話すのも
嫌になってしまう

気にすれば気にするほど
心は暗く澱むから

小さいことだと割り切って
楽しいことや
嬉しいことに
目を向けて
生きてゆくしかないけれど

人と違うから
損をする

多数に合わせないと
割を食う

そんな世の中じゃ
誰だって
自由に泳げなかろうに