やがて元に戻る

かつての田舎の夏休み
汚れるのが嫌で
入るのを躊躇した泥田

百姓のおじさんは言った
洗えばきれいになるよ

腰の高さまで
泥にはまって

一歩踏み出すごと
転んで

泥まみれで遊んで
エビカニを採った

楽しい思い出

あれからずいぶん経って
泥にまみれることもなく

汚れるのが
嫌になって

近づくことさえ
躊躇するようになった

楽しいことの前に
ハードルがあると

跨ぐのが
億劫になってしまった

しかし
壁を

少しの労力で
取り払われることが
分かりきっている
壁を

毎日眺めていたって
仕方がない

汚れても
疲れても
傷ついても

やがて
汚れは落ち
疲れは癒やされ
傷は治る

そう信じられることが
生きること