囚われの時

隣の寝床で
がなり立てていた

いびきも
戻ってこない

存在は

見せつけられれば
憎々しく

無くなれば
なつかしい

失われると
分かっていても

日常は
慣れの連続で

一つ一つの出来事に
有難味を感じていたら

感謝の時間に
追われてしまうから

ありふれたものには
さして心動かされず

さりとて
吟味してみれば

やはり
日常には
失いたくないものが
溢れている

嫌な奴だと思っていても
いなくなってみれば
さびしい

嫌な奴でなかったから
いなくなるのは
もっとさびしい

出来事の度に思い出す
故人の影

振り払い
解き放たれる前に

今は囚われている
それが必要な時