きれいな木霊

高く上り
山肌に向かって
声張れば

遠くから
響いてくる木霊

大きな声なら大きく
小さな声なら小さく

わたしをなぞり
追いかけ

反響で山は満ちる

人の世の
山々

親切には親切
悪意には悪意

上の権力にすり寄れば
下の者をこき使い

ズルく怠惰に生きるなら
他人を不審の目で見るようになる

今日
わたしは

ふいに
やさしくされて

戸惑って
困ってしまった

人の親切を
素直に受け取れない自分は

これまで
人にやさしくしてこなかったんだと

後で
一人問うて

感謝より
苦悩が満ちてきて

そんな自分のことしか考えないわたしが
ますますちっぽけで
悩ましくなった