こんなきれいな秋の夜は

こんなきれいな秋の夜は
何をしたって似合うだろう

こんなきれいな秋の夜は
歩く街さえ美しい

少し欠けた名月が
背中を照らす

薄明るい空
店仕舞いした八百屋や魚屋が

ぼんやりと
闇に浮かんで

私の影は
建物を舐めるように
伸びる

たなびく雲
流れる風

月は
雲をかぶり
またたき

また街を照らす

こんなきれいな秋の夜は
少しくらい
酔ってもいいか

こんなきれいな秋の夜は
嫌なことくらい
忘れていいか