黒い記憶よ 不条理よ 世を捨てた人に

一雨過ぎた
青空の下

寒い風に吹かれ
徘徊する体へ

いま
忌まわしい
過去の扉を
こじ開けよう

人が人でいられない
人として扱われない

悲し日々の記憶を
再び蘇らせよう

比べられ
どこまでも軽んじられ
無視された日々

無用の長物と
罵られ
廊下を拭いた
あの日

努力が足りない
もっとやれ

そんな叱咤を
激励と思って

いいように使われ
捨てられた

何度も何度も

我々の同輩よ
生きる気力を無くしたものよ

時代は変わった

いま
我々の如き
辛抱など

つまはじきにされて
そのままに
歳を取って
もう何も出来ない

壊れた青春を
放置するだけの

感情を封印し
人生に蓋をした
存在など

見向きもされない
邪魔なだけなのだ

世を恨んでも
仕方がない

いつまでも
甘えているな

いくらでも
言われてきた

じゃあ
どうしたらいい

働いたって
もらえる金は

同じ仕事したって
もらえる金は

3分の1以下

5年経てば
首切り

何度も
首を切られた

3度も
4度も
5度も

また働いたって
首を切られる

働く前から
分かっているんだ

それでも
まだ働けって言うのか
甘えてるって言うのか

もう嫌だよ
しんどい思いして

いくら働いても
惨めになるだけなんだ

年度末
職場の送別会が開かれて

何人かの
移動と退職を惜しむ
正規職員のパーティー

その日に辞めさせられた俺には
声なんてかからない

皆の歓声を尻目に
タイムカードを押して

職場の裏の

一人
涙を流して
コップ酒を呑んだ

忘れたはずの記憶
思い出しても
何の得にもならない

忌まわしい
過去の枷

今日の風は
やけに肌に刺さる