角が取れる

何度も負ける

陰惨な日を
いくつも
通り抜けてくるのが
人生ならば

若い人間の
敗北への忌避感
敗者への残酷な視線は

若さゆえの
誰もが持つ
冷徹と未熟の発露

負けを知らないから
負けた者を足蹴に出来るし

負けたことが事がないせいで
敗北を許せないし
見つめていられない

歳を取ることは
負けに出会うこと

顔の皺が
増えるたび

人の心は
やさしくなって

誰かを蹴落としてきた
生の激しさは薄まって

無気力と失意と
許容精神を
手に入れる

青臭い
新緑から

黄色く染まる
秋風になびいて

周りなど
見えない

ひたすら自分だけを思って
狭い世界でいきり立っていた日々から

やさしく
かなしく

負けの味を知り
人の苦労を知って

同情し共感し
納得し
諦めを受け入れられるようになる

角は取れて
丸みを帯び

なめらかで
当たり障りのない

同じような
石ころになる