コンビニの無銭飲食者

コンビニのイートイン
高齢の男性が一人

入るなり
コーヒーメーカーの横

クリープとシロップを
ガバっと取って座る

一冊の本を取り出し
クリープを開け

ちびりちびり
舐めるように飲んで

シロップを開け
クリープに少量注ぐ

本を読みながら
まるで酒でも飲むように
とうとう全てを
飲みきった

休日の夕刻に
コンビニで一人
コーヒーも買わないで
クリープとシロップだけの
時間つぶし

かましいのか
哀しいのか

怒るべきか
憐れむべきか

軽蔑か
同情か

わたしは
夢想する

ねえ爺さん
タダのミルクは旨いかい

こんな言葉を吐く私を
わたしは嫌う

嫌味と傲慢
上から目線

しかし
他にどんな言葉をかけられよう

代わりが思い浮かばぬ
わたしは葛藤する

この爺さんに
何も言えぬ

言う必要もないけれど
言う資格もない

都会によくある
ただの邂逅の一つなのだから