自分がなくなる

自分がなくなる時が
一番幸せだ

悩んだり
苦しんだり
人と己を比べたり

卑屈になったり
尊大になったり

そんなこと
一つも思わずに
いられる時

黙々と
草を刈っている時

眼の前の料理に
舌鼓を打つ時

風呂に浸かって
鼻歌を歌う時

電車の時刻表を
見ている時

訪ねたことのない
場所の地図を眺める時

自分と関係のない
何かのことを
熱中して考える時

なにかしていれば
己を忘れる

己のことを考え出せば
堂々巡り

いくら考えたって
悪いものは悪いし
短所は消えない

過去を悔やんでも
どうあがいたって
消えはしない

ならば
考えないことだ

何かをしていることだ

自分の存在を
棚に上げて
熱中してさえいれば

幸せでいられる