稀人来たりて

マレビトの来る夜は

薄ら寒い風が吹いて

 

遠くから

匂いの違う

空気を運んでくる

 

街から街へ

村から村へ

 

異端者は

冷たい視線を浴びながら

風を運び

 

私たちは

違和感だけを覚えて

彼に気づくことはない

 

また視線が

あの時の夢が

 

たった今の現実なのに

過去に見た

記憶の感覚

 

不思議な幻視

 

その隙きを縫って

マレビトは渡っていく

 

街から街へ

意識から意識へ

 

記憶から記憶へ