自然の美しさ

大海の夕焼けも

湖畔の静けさも

絶景の渓流も

山頂の雲海も

 

鳥や獣は

どう眺めているのだろう

 

毎日

浜辺に暮らしていれば

 

家の前に沈む夕陽を見て

感慨に耽ることもないだろう

 

同じ風景を

いつも見て

何も思わなかった数千回目に

新たな感激を受けるかもしれない

 

同様に

子供にとって

自然美など感じられるものではない

 

子供の全ては

まず母親

次いで父親

 

それから段々と世界が広がってゆき

いつかどこかで

自然の美しさなる観念を知ることになり

 

何度も何度も

非日常として自然を見て

ようやく自然に心が動く

 

それに比べたら

人間の人間に対する興味は

生半可なものではない

 

生活も恋愛も

仕事も結婚も

人間への関心によって成り立つ

 

人は人であり

集団の生き物である

 

だが

それでもなお

 

人は自然の子で

自然に抱かれる心持ちを

忘れられない

 

どんな都会に住もうと

 

しとしと降る雨も

照りつける太陽も

黄色く染まる落葉も

身を縮ませる寒風も

 

すべて五感に染み入る自然である

 

目の前の

小さな鉢植えに生える

一輪の花が

 

私にそう語りかける