馬よ届け

大将

まだ間に合う

 

帰る前に

馬が見たいと言った

 

ジャングルのようなビル

重機を運ぶエレベーターを下り

 

階段をめぐり

ビルからビルへ

飛び回り

 

馬を探した

 

大将は

強制送還

もう戻れない

 

馬は転がっていた

大将のもとへ送り出し

 

最後の姿を

遠目に佇む

 

足が勝手に動いた

何としても大将のそばへ

 

人の波を抜け

線路を回り込み

鉄格子を越え

 

息せき切って

たどり着いたとき

 

大将は

もう死にそうだった

 

大将

大将

 

何度も

叫んだ

 

顔がこちらを向き

目が合う

 

だが

言葉が出ない

 

嗚咽するのみ

 

それを見た大将は

分かったと一言つぶやいて

倒れた