修辞

戦争や震災に

名を借りて

 

言葉を紡ぐのは

なんと楽なのだろう

 

大量の死

泣き叫ぶ声

 

理不尽で

やりきれない感情を

 

大きなスローガンに括り

 

ああでもない

こうでもないと

 

様々な角度から

修辞を競い合う

 

一人の苦しみも

一人の泣き声も

 

等身大の視点ならば

 

出来事の時事性になど

左右されない

 

大いなる歴史に

巻き込まれる個も

 

すぐそこの酒場で起こった

些細なきっかけの死も

 

どちらに

理があるわけもなし

 

修辞とは

 

結果に至る

人の振る舞いと

 

人の至らぬ

不条理のどちらも

 

説得しうる

言葉の可能性への挑戦であり

 

安易なテーマで

得られる共感など

 

安酒に酔う

二日酔いの錯覚に過ぎない