汽車の夢

今日も汽車は走り
私は駅から地の果てまでの
旅に出られる

かつて詩人は
あいるらんどへ汽車で行こうと書き
ふらんすがあまりに遠く
汽車で山道をゆくと書いた

乗らなくたっていい
片田舎の駅から
毎日いつだって
知らない街に
出て行ける

日常から飛び立ち
箱の中で揺られ
私のことを誰も知らない場所へ
運んでくれる

そんな予感を懐に抱いていられる
それだけでもう
汽車は有難い

敷かれたレールは
日常に風穴を開ける
力強い駆動は
車窓を後ろへ押しやる

未知の世界への憧れ
逃避行への不安
人々の有象無象の
願いの一切を引き受け
汽車は毎日走っている

走り続けて
切り開かれた世界に
人々が交差し
ものが行き交い
それを飲み込む都市の片隅で
私は今日も夢も見ていられる