駅前の踏切

踏切のある街は
めっきり少なくなり
電車は地下や高架を走る

便利になったものだ

学校へ職場へ
映画館へ
もう間に合わないと
遮断機が上がるのを待っていた

警報機のカンカンと鳴る音に
いつも焦燥と緊張を思い出す

電車が通過した途端
警報機が鳴り止み
遮断器が上がり
人々が交差する

緊張と弛緩
分断と交流を繰り返し

人々は鉄道に時間を支配されながら
鉄道を生活に組み込んでゆく

人間も自転車も自動車も電車も
邪魔だと思うことがあっても
時に譲り合って
同じ平面の中に暮らしていた

高いビルが立ち
道路と線路が交差して
立体的な生活が実現してみると

便利だけれど
いろんなものが住み別れて
一緒に生きてる気がしなくなってしまった

郷愁に違いない
利便や合理性に屈した過去にも
心地よさはあった
あの時は
それが分からなかったのだ