便利になって疲れた

便利な世の中になった
家にいて肉や野菜を注文し
電車やバスの乗車券を書い
外国の友達に寸時にメールできる

便利になって良くなった
違いない
違いないのに思い出す

便利になった分だけ
自分は何が変わったのかと

郵便局に手紙を出しに行く
駅前の交番で銭湯の場所を聞く
時刻表で電車の路線と時刻を調べる

目的までの時間と手間が
今では大幅に短縮された

短縮されて
携帯電話とパソコンで
自分で見つけて解決できるようになった

さまざまなことが便利になった楽になった
しかし楽しくなった気がしない

便利になって空いた時間で
自分は何をしているのだろう

それが思い出せない
おそろしく無駄に時間を費やしている気さえするのだ

昔に戻りたいなんて思わない
便利な方がいい
懐古は年寄りの特権
それに弁護はいらない

ただ頭から離れないのは
郵便局帰りの道草
交番で親切にされた思い出
目的へたどり着く途中の出来事

デジタルになって
行間がなくなって
無駄がなくなって

サボれなくて
フラフラできなくて
ちょっと息が詰まってる