三人のアームストロングの一人

偉大な三人のアームストロング

『この素晴らしき世界』を歌い上げたサッチモことルイ・アームストロング

月面に初めて降り立ち「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」と言ったニール・アームストロング船長


自転車のアームストロングだけが闇に落ちた
ガンを克服してからの
圧倒的な強さ
ヒルクライムを観て熱狂した

その熱狂がドーピングによってもたらされていたと知ったのは
自転車競技を観なくなってから

アームストロングの強さだけが
いまだ印象に残る

だまされた気はしない
興奮していたのだ
自分の気持ちに嘘はない

ただ
興奮していた記憶も忘れかけた時
不正を知らされて
胸のうちに空虚が満ちた

虎の強さに憧れていただけ
それが張り子の虎だとは
知りたくなかった

不正を糾弾するつもりもない
アームストロングに怒りも落胆もない

偽りに熱狂していた
奇妙な自分を認めてしまうことに
躊躇した

そんな不思議な虚無感を抱いたから
アームストロングは忘れられない