耳打つ雫

台所の蛇口から落ちる水滴が
メトロノームのように聞こえる

ポトリ
ポトリと滴り

規則的に
耳に響き
夜の静寂を際立て

機械のような
正確なリズムは
不安と緊張を高める

この世界に
ただ水滴が
一粒一粒
生まれ落ちる

そんな妄想に浸ると
夜はますます長く
いつまでも続くようで

蛇口を締めにゆくか
逡巡していると

響いてくる水滴と
内なる心臓の鼓動が重なり

二つのリズムが奏でる
ハーモニーが
生命そのもので

規則性の緊張と
崩壊への不安と

すでに我が身にあったと
気づき

つかの間の
安堵に至った