大部屋俳優

一山いくらで扱われ
何時間も出待ちして
登場するのは数十秒

斬られたり
水に落ちたり

顔も写らず
名前も知られず

どこにでもいる
有象無象として
映画に出続ける

なぜ続けるか

ただ夢だけを抱きかかえているのか
夢に敗れてもう行く場所を失ったのか

個性は表に出ないけど
そんな彼らがいるのだから
映画が出来ると信じている

主役が際立つのも
斬られ役があってこそ

我々は皆
この世界で
人生のほとんどを
地味で名も知れぬまま
大部屋に暮らすのだから

大部屋俳優として
生きるのは
誰にもあるはずの経験で

たった数十秒でも
スクリーンに写るのは
誰もが持つ夢かもしれない