言葉への礼賛

一人だけなら
言葉は要らない

相手がいなければ
話をしないのが当然だし

メモや書き付けも
未来の自分という他者に向けられるのだから

他者がなければ
言葉はない

有り余るほど
言葉が巷間に溢れ

目的を見失い
ただ言葉だけを再生産し

寄りかかり
膨れ上がって

どこまでも
増えてゆく言葉

意味よりも
交わすことが大切な言葉

挨拶や天気を
とりとめもなく喋り

話したいから
話すのでなく

沈黙を怖れるために
発する言葉

うんざりしても
痛い目にあっても

決して
手放さない言葉

言葉を失えば
人との関わりも
世界も
自分も
確かめられない

大切だとか
何物にも代えがたいとか

わざわざ言うまでもない
自明の言葉

頼りにしている