大事なのに失くなってゆく

大好きなもの
映画館
古本屋
銭湯

どんどん
失くなっていった

大きなスクリーンも
50円本のワゴンも
足を伸ばせる湯船も

金がかからないけれど
贅沢で
身近で
素敵なものが

どんどん
失くなっていく

良いものだけれど
儲からない

金という価値に
置き換えられないと
生き残れない

私だって
金は欲しい

金は大事
無下にできない

だけど
大事なのは金だけじゃない

今日
また一軒

東北の湯治場の
古い宿が
ひっそりと
廃業した

黒く光る柱
湯の香り染みる浴舎

田舎のおばあちゃんの家のように
安心して
心身を投げ出せる場所

いくら金をかけたって
つくれるものじゃない

なぜ
大好きなものが
失われてしまうのか

効率

追求するのは悪くない
だが
追求しなければならないなら
見えない足枷だ

ほどほどのところで
ほどほどに生きられないと
息が詰まってしまうのだ

適当なことだけど
深刻なことなのだ