闇の中の虚空

光差さぬ暗闇で
中空をただ見つめる

トクン
トクン

心臓の拍動だけが
時を支配し

闇は黒く
だがベタ塗りでなく

網膜の裏を照射したような
細かく捉えがたい
電気信号のような
何かを映している

己だけ在り
他は無く

死の世界に
独り生きている錯覚が
私を襲って

この漆黒に
いづれ取り込まれて

人生を手放す時を
夢想し

恐怖より
虚無が先立ち

ただ周りに溢れる
闇と同じものに
なってしまう

その無意味と
生の限界とが

おそろしく
単純であると

発見した気になって
また心臓の音に
聞き入った