親を想う

大切に
大切に
育てられてきた

熱を出せば
必死に看病し

嫌なことがあるたび
壁にぶつかるたびに
自分のことなど放り出して
心配し面倒を見てくれた

私のなかに残してくれた
これほどの優しさと慈しみを
私は誰にかに与えただろうか

無条件に
対価を求めず

善意を注いだことは
あっただろうか

優しく育てられ
笑顔のなかに成長し

その屈託のなさを疑うことなく
人を信じて
生きてこられた

その幸せを
自覚したことは
あっただろうか

そもそも
優しさと慈しみを
受けたことに気づき

それを誰かに
返さなければいけないなんて

考えているのが
打算ではないのか

人を疑うことを覚え
疑いに興味が湧き

疑いに沈み
疑いに溺れた

どこまでも底に堕ちて
やりきれなくなった時

今でも
一筋の光のようにすがるのは

子供に頃
優しく
育てられた

親の顔だ