物に宿る記憶

古びて
使うに耐えない

押し入れの奥の
思い出の数々

捨てようと
幾度思ったことか

その度
思い留まり

使うわけでもなく
ゴミ同然の扱いで
放置したまま
現状を甘受している

物がなくなっても
何も変わらない

むしろ部屋が広くなり
便利になる
悪いことなど無い

だけど
ある時期まで
大切にしていた物を

使えないと分かっていても
ゴミと認めるのは
忍びないという気持ち

こちらのほうが捨てられない

前に進めず
過去が積もってゆく

いくら昔が大事だとしても
過去に埋もれて
身動きできないのは本末転倒

ただ
そんなに深刻じゃなくて
生活が滞るようなものじゃなくて

モノに宿る記憶
モノを触った途端に
溢れ出す思い出

ちょっとした心のタイムカプセルが
ときに素敵なものだから

いまもモノたちは
押し入れの奥で
眠っている