人の世のつながり

はるか北の海で獲れたサンマが
スーパーで
100円で売っている

大漁のニュースは
テレビの中の出来事でしかないのに

こうして
眼の前に

サンマがあって
去年より安く売っている

人の世のつながりが
虚妄なのか現実なのか

海の向こうに
飢えている人がいて

食卓の上には
食べ物があり余る

新聞もテレビも
現実を伝えているのか
確かめようがない

ただ
現実だろうと信じ

これから来る台風や
世界の政治や
サンマの豊漁を

眼の前の生活と
照らし合わせ

さしたる根拠もなく
納得する

それで良いのかと

悩むのも面倒で
無駄に思えるから
納得する

納得することで
世界を回し

なんとなく
世界の一員になって
今日も生きている

世界の事件は

いま
ここにいる
私の切実さを

曖昧に
ぼやかし

生きることを
楽にすると同時に

虚と実を
巧妙にごまかして

広い知識を
分け与えながら

人の生死や痛みへの
感度を鈍らせていく