ただ穿つ

コツンコツン
都会の片隅で

目立たず
気づかれず

今日も穴を穿つ

コツンコツン
その音は

いつも変わらず
休むことなく

小さなビルの中
四畳半の端

豆粒のような穴が

長い年月の間

指が入り
腕が入り
体が入るようになった

その穴から
行き来して

さらに下に
穴を穿ち

コツンコツン
今日も音は聞こえる

このまま
掘り続けて

住んでいる家が
まるごと入るような
穴になって

まだ掘って
大きなビルより
深くなっても

命の続く限り
まだ掘れるんだ

植物が芽を伸ばし
根を張り巡らせるのと同じように

掘り続けて
意味なんてなくて

穴が大きくなって
振り返った時

意味がついてくるのかもしれない