水が美味ければ私は大丈夫

固まった世界に
体はガチガチになって

視界に膜が張り
視野は狭まり

生きているのか
死んでいるのか分からない

なんとかして
動き出そう

殻を破って
停滞と困窮の今から

生き物としての
鼓動を取り戻す

思い立って
歩き出す

陽が天に昇り
傾くまで

一本の道を
ただ歩いて

足が棒になり
何も考えられなくなって

へたり込んだ

やっぱり
何も変わらないのか

世界からは
抜け出せないし

自分も変わることなどない

諦めと悟りが
脳裏によぎり

手元の水を
一口飲んだ刹那

どこまでも
染み入る感覚が

全体に拡がる

体が
水気を
吸い込んでいく

一口飲んで
また
一口飲んで

喉を通る快感
水のうまさ

味わっても
味わっても

飽き足らず

また飲んで

いつのまにか
解き放たれていた

良かった
まだいけそうだ