土地の匂い

どこを旅しても
知らない土地に来たと
実感できるのは

観光名所でもなければ
郷土料理の店でもなく

銭湯や
バスの待合所
煙にくすんだ焼鳥屋のような

生活がにじみ出ている場所で
よそ行きでない言葉を聞いた時

土産物売場みたいな
きれいなパッケージが並んだ所でなく

魚屋や肉屋に並ぶ
惣菜の一つ一つの違いが見えた時

生きてることは同じでも
喋る言葉
食べるものは
それぞれ違って

この土地に住む人は
違う血肉で出来ている

それでいて
同じ場所で話し
酒を飲み

わたしは
流れてくる会話を
じっと聞く

人の噂話
上司の愚痴

どこにでもある話が
違う言葉で
不思議なリズムを刻み

異世界からの訪問者として
自分が浮かんで

遠くまで来た
旅路をまた
振り返る