香港屋の親父

四畳半に満たない店
四人がけのテーブル1つ
ほとんどは持ち帰りの客

香港屋は
中国人の親父が一人で営む

脂ぎったテーブル
小さなテレビ
蠢く羽虫

古ぼけた電球が
照らし出す
小さな額には
母と娘の写真

親父は遠い異国の場末で
一人
今日も鍋を振るう

どこかの店で
修行して

念願叶って
出した店ではない

パックの中華惣菜を
100円か200円で売る

どこか片手間で
やっているような

しかたなく始めて
ずるずると続けてしまったような

間延びした
緩慢で気だるい空気が
溜まっている店

小さくても
愛される
大切な店と言うより

親父の苦労と挫折の果ての
哀愁を帯びた店

多くの人が嫌悪し
避けようとする
人生の哀しさを
しみじみと感じさせる

わたしには
心落ち着く店