乗り遅れ

また乗り遅れた
夜行列車に

あと一つの弁当
あと一つの飲み物
そんな小さな欲望のために

大切な列車に
乗り遅れてしまった

ゆっくりと
走り出した列車

階段を駆け上がり
白い息をはいて見送る

テールランプが
ゆっくりと糸を引くように
消えてゆく

ポツンと取り残された
深夜のプラットホームで

頭を垂れ
終わったことを
悔やむ

悔やんでも
悔やんでも
仕方がないのに

悔やまなければ
いけないような

悔やむことが
贖罪であるかのような

口惜しさと
罪悪感で
ホームから動けない

吹き出た汗は冷え
寒風に体温を
身ぐるみ剥がされるまで

一人立ち
無用になった弁当の袋を
離さなかった