山頂

登頂した

 

達成感も

充実も

あまりない

 

ただ

もう足を動かさなくて良い

 

登りからの解放で

安堵に満ちている

 

風に吹かれ

雲海を眺める

 

遠くの山が

ポツリポツリと顔を出し

雲の上に浮かんでいる

 

疲労にまみれた全身に

ろくな考えは浮かばない

 

呆然と眺め

眼に場所を焼き付ける

 

こんなものか

なんでもないな

 

なぜこんなこと

したのだろう

 

疲れるだけなのに

 

空っぽになって

眺める

 

今の

疲れも痺れも痛みも

 

しばらく経てば

忘れてしまう

 

だが

この風景

 

下り

そして仰げば

山は大きく見え

 

遠くに起立する

佇まいを眺めるだけで

登ったことを思い出す

 

辛さは忘れる

 

登ったという事実だけが残り

達成感は後から湧く

そしてまた登りたくなる

 

分かっている

そんなことは

 

だけど

今は辛い

 

もうしばらく

このまま眺めていよう

 

汗が引き

景色に飽き

納得したなら

 

下ることにする