銭湯マナーの果て

銭湯に
通えば通うほど

様々な人
変わり者との出会いは
避けられぬ

浴室に入るなり
全ての浴槽の
蛇口を全開にして
水で埋める男

浴槽に浸かりながら
手拭いで体を擦りまくる男

水風呂で歯を磨き
口をすすいで
浴槽に吐き捨てる男

思い出せば
うんざりするほど

恐ろしい奇行が
世に満ちている

ゆえに

銭湯に
通えば通うほど

風呂場での振舞い
マナーに厳しくなり

自分だけでなく
他人まで監視するような
感覚になって

常連が店を作るじゃないけれど

清潔で
迷惑をかけない空間にしたいと
願うようになり

自分が正しい人であると
確信した時から

マナーを守るということが
自分の価値観を押し付けることに
重なって

正しいことをしていると
信じ込みつつ

自分のワガママを
通そうとしている

そんな傲慢の塊になって
デカい面して常連の
偉ぶる一人に成り下がり

今日も
マナー警察のごとく
目を光らせて

自分に都合の良い
場所のため

他に人には
ギスギスした緊張を

与えてしまって
気づかない

そんな人に
私はなっている

かもしれない