古き湯の灯は落ちて

最果ての

海辺の村に

湧く古湯

 

終わりを迎えた

共同湯には

 

今日も

漁師が集い

疲れを癒やしている

 

ヒバの香り漂い

白濁した

湯船に立ち昇る

蒸気に身を晒し

 

壁一枚隔てた

凍てつく冷気に

身を守ってきた

 

古びた木の浴舎は

もう役目を終える

 

隅々に染み込んだ

人の息遣い

 

使われ続け

刻まれた年輪は

 

どれほど

美しい建築にも

出せやしない

 

二度と戻らない

湯船に浸かりながら

 

旅の遠さと

時の流れ

 

移ろいゆく

戻れない季節を

噛み締めていた