啄木を思えば

真面目だ

この国は

 

文学も

芸術も

 

真面目で

固くて

 

作品も

人も

 

型破りなのは

わずかに残る老人のみ

 

過去の破天荒な

変人の精神の残滓がなくなれば

 

言葉は

人の拠り所として地位を失い

 

社会に奉仕する存在としてのみ

機能することになる

 

人として生まれ

社会との折り合いをつけるべく

葛藤しながら成長し

 

なお

生き物としての情念や欲望を残しつつ

矛盾と苦悩に晒される

 

その救いだったのが

文学ではなかったか

 

啄木の

美しき言葉を発する裏に

破綻者の生涯があった

 

彼が人格者であったなら

彼の言葉は

俗なる凡庸なものに堕落していたに違いない