小さな世界のために4

 生まれ落ちて、最初に覚えていること。

 それは手の甲で眼を擦ることだった。眠りから覚め、目の周りについた乾いた目やにを擦ると、ジャリジャリとした感触が伝わる。その味わいは蠱惑的で、いつまでも止めることができない。

 今でも起きたら必ず、毎日、子供の頃から刑務所の中まで、この行為は続いている。

 それは無意味であると同時に、生きることと同義であり、私の人生の始まりから続いている儀式である。