小さな世界のために3

 後悔。

 人生を後ろ向きに生きること。

 これまでの人生が、人と比べてとりわけ不幸だったとは思わない。悲惨な出来事も幸運な記憶も一通り経験してきたつもりだが、決定的な断絶や過失はなかった。大したことのない人生であった。しかし、現在これほどの苦しみに悶ている。過去を振り返り、悪いことばかり思い出して、己を罰している。その考えの有り様は、深々と根付いてしまい、どう足掻こうと取り除けそうにない。

 ならば、集めるほかないだろう。記憶を手繰り、言語という形にして、その姿を観察する。出来上がったものが醜悪であろうが、あやふやなイメージを思い浮かべ、苦しげな方へ己を誘導している今に比べれば、はるかにましだ。何事もなければ、何事もなかったと確認すれば良いだけなのだ。

 生まれ落ちてから、何が私を変えてきたのか、振り返る。

 それは自伝というには粗末だが、創作とも言えぬ。それでいて、私のオリジナルであることに間違いはない。