小さな世界のために2

 己を取り巻く絶望が問題であった。

 内実などなくても良い。

 ただ無力さに襲われないため、己を守りながら、安らかに死に向かう方法論が欲しかった。

 世界の広さ、多様性、それらを知れば知るほど、自分の小ささが悲しく思えてくる。だから、複雑で魅力に溢れた現実と向き合うことはできない。小さくても、完結し、それでいて充実した何かを生む。そこには断絶があってもよく、悲劇も苦しみもあってもよい。だが、寛容や許容の名の下に、空虚が入り込んではならない。不自由は許せても、空っぽの自由は駄目だ。胸の奥にスカスカな風を吹かせてはならない。

 そう考えて、まずは地の重さ、足を引きずる愚鈍さに向かう。

 高踏で軽やかな詩などもってのほか。のっぺりとしてもずっしり重く、紙を黒く塗りつぶす散文がふさわしい。