死を知ったとき

小さい頃
人が死ぬと知ったとき
こわくてかなしかった

自分が死ぬ時を考えた
家族が死ぬことを考えた

一緒に住んでいた
父と母と祖父と祖母と
同じ部屋で蒲団を並べて
眠るように
一緒に死ぬのが一番良いと思った
それしかないと思っていた

あれから数十年

祖父が死んだ
祖母が死んだ

私は家族と共に死のうと考えなくなった
私は私で
家族は家族

自分も家族も全部一緒で
分け隔てのない
世界への眼差しを失った

私は一人の人間になった
どこにでもいる
ありふれた
ただの大人である

子供の頃の
夢のような混沌は
もう味わえないだろう