横綱 哀愁

幕内の取組みは全部見ていた
毎場所楽しみに

横綱との一番は
場所々々の好取組

小さい身体で
低く立って
時に喉を突き
時に深く差して

観る者をハラハラさせ
大負けもある代わり
立派な優勝回数を残した

横綱の引退
人を殴ったのは確かだろう
責任を取らなければ
ならないこともあろう

だが今は
横綱の土俵入りと
取組みが見られなくなるのが
ただ悲しい

幕内に入った頃から
他の力士よりも積極的に
介護施設を訪問していた

母国に救急車を寄贈し
角界がもっとも遅れていた
社会貢献に目を向けた人だった
それをどれだけの人が知っていただろう

横綱の引退を願った人は
どれほどの好角家だったのか

普段相撲を見ていない人には
横綱がいようがいまいが関係あるまい

ただ暴行事件を巡っての
相撲界の不祥事と
面白おかしく騒いでいるだけだ

毎場所の取組みを見ているなら
好取組がなくなる寂しさと
一人の横綱
永久に戻らない無念を
悼む気持ちが
無いはずがなかろうに