山の向こう

山を越えた景色が

どれほど

味気なかろうが

 

越えなければ

幻想は

いつまでも続く

 

幻想に

悩まされ

憧れ

 

現実を失っても

なお

たどり着きたいと願い

 

幻想は

ますます美化され

畏怖の対象となり

 

渇望と羨望

対象への距離を

毎日測っては

 

己の小ささに

幻滅している

 

それが幻想でなかったら

考えもしなかった

感情の襞が

 

いつまでものしかかり

己を痛めつける

 

越えるか

諦めるか

 

その二つを手にできない今

 

小さな一歩を慰めとして

自己憐憫に用い

 

自己肯定に懐疑的になりながらも

他の消極的選択肢を排除し

 

己を追い立てるくらいしか

思いつかないのだ